2026年10月22日
今までの暮らしに、キッチンだけを新しく
神奈川県川崎市の戸建て住宅。床も壁も、勝手口も窓も、輸入住宅らしい趣のある内装はそのまま活かしたい。変えるのはキッチンだけ——そんなご要望でした。
周りの内装を残すということは、新しく入れるキッチンの見せ方次第で、空間全体の印象が大きく変わるということでもあります。既存の空気を壊さず、それでいてしっかり印象を変えるにはどうするか。輸入住宅の柔らかな雰囲気の中に、モダンで硬質な黒の石目柄を持つオーダーキッチンを据える、という構成です。工事中も施主様は普段どおり在宅のまま。生活を止めないことも、最初から前提に置いていました。

「二人で立てるキッチン」を、家具の配置から考える
プランの起点になったのは、シンクと3口ガスコンロを一体化したアイランドカウンターです。背面には吊戸棚と引出し収納のカップボードを置き、料理の一連の動作がここで完結するようにしました。
窓際にはもうひとつ、サブシンク付きのカウンターを設けています。二人が同時にキッチンに立てるための工夫です。一人がメインのアイランドで調理をしている間、もう一人が窓際で洗い物や下ごしらえをする——そんな並行作業ができるかどうかで、日々の使い勝手はまったく変わってきます。
家具の寸法は、大型冷蔵庫に合わせて割り付けました。さらに、洗濯機と衣類乾燥機はキッチン内の扉付き収納の中に納めました。ランドリー作業がキッチンから見えないようにすることで、生活感と非日常的な意匠が同居する空間にしています。
レンジフードは、既存の天井を開口してダクトを新しいアイランドの位置まで振り替えました。全ねじボルトで吊り、レーザーで高さと水平を出しながら固定しています。





黒石目を美しくつなぐ、細かな柄合わせ
このキッチンでいちばん時間をかけたのは、実は素材選びでも設計図面でもなく、「柄合わせ」でした。
扉、側板、背面壁パネル、吊戸棚まで、黒の石目柄で統一しています。石目のような自然素材の柄は、面材が一枚変わるたびに模様の流れがぶつ切りになりがちです。そうなると、どれだけ高級な素材を使っても、空間全体としては安っぽく見えてしまう。そこで、板取りの段階から柄の位置を決め、扉一枚一枚に番号を振って搬入し、その番号どおりに吊り込むという手順を踏みました。手間はかかりますが、こうすることで面材をまたいでも石目の流れが連続して見えます。
天板はグレーの石目柄。ここも「薄くて軽い天板」にはせず、あえて厚みを見せるふかし加工と留め納まりを選びました。天板が薄いとキッチン全体の存在感も軽くなってしまうため、ボリューム感を持たせることで空間の主役としての存在感を持たせています。一方で、背面カウンターだけは白系の天板にしています。黒一色でまとめきってしまうと空間が重くなりすぎるため、あえて一箇所だけ抜け感をつくり、コントラストで黒の存在感をより引き立てる狙いです。
面材はハンドルレスでフラットに構成し、唯一手が触れる引手とスイッチプレートだけをゴールドに。さらに吊戸棚下のライン照明と、天井をふかして仕込んだコーブ照明で、あえて石目に陰影を落としています。石目という素材は、光の当て方ひとつで表情がまったく変わるため、照明も意匠の一部として計算しました。


開けると赤。閉めれば黒、静かなサプライズ
外から見える部分は黒一色で統一していますが、引出しの箱、側板、棚板、吊戸の内部まで、すべて赤で製作しています。これは現場で塗ったものではなく、工場の製作段階からこの仕様で組んでいるものです。
閉めているときは黒一色の静かな佇まい。けれど扉を開けた瞬間、内側には赤が広がる。この落差そのものを、意匠として設計しました。毎日何気なく開け閉めする収納が、ちょっとした楽しみに変わる仕掛けです。
もちろん、見た目だけでなく使い勝手にもこだわっています。シンク下は止水栓、浄水器、食洗機の分岐、排水トラップが集まる、いわば配管の交差点です。ここでホースと配線が絡み合ってしまうと、後々のメンテナンスのたびに苦労することになるため、あらかじめ交差しないように整理して配置しました。将来の点検や交換のしやすさを見据えた納まりです。コンセントも扉の内側に設け、配線を外に出さないことで、赤い内部の見た目もすっきりと保っています。


暮らしを止めないための、見えない気配り
施主様が普段どおり生活しながら進める工事だったからこそ、目に見えない部分にも気を配りました。木枠にビニールを張った自立式の間仕切りで、作業エリアと生活空間を分離。床は養生ボードで保護し、既存のカウンターや家具は毛布とビニールで包み、脚立の脚にもカバーを付けました。小さなことですが、こうした一つひとつの積み重ねが、工事中のストレスの大きさを左右します。
解体時の粉塵対策と、作業終了ごとの清掃も欠かしませんでした。断水やガス停止が必要な作業は事前に日時をお伝えし、その日のうちに復旧できる範囲で区切って実施。「キッチンが使えない日」をできるだけ短くするため、家具は工場であらかじめ完成させ、現場では搬入・据付・接続だけに絞りました。騒音の大きい作業についても、あらかじめ時間帯をお伝えしています。




おわりに
輸入住宅の趣を残しながら、黒の石目柄と赤い内部という強いコントラストを持つオーダーキッチンを据えた事例です。ひと目でわかる意匠のこだわりの裏側には、柄をつなげるための地道な番号管理や、ダクトという制約を照明に変える発想、そして既存住宅の歪みに家具を合わせ込む精度出しがありました。派手な見た目と、それを支える細やかな判断。この両方があって初めて、暮らしを止めずに空間の印象をまるごと変えることができました。
ワイズキッチンファクトリーでは、内装はそのままにキッチンだけを新しくしたい、既存のお住まいの雰囲気に合うオーダーキッチンを探している、住みながらの工事が不安、といったご相談をお受けしています。素材選びから設計、施工まで、お客様のお住まいに合わせて一からご提案しますので、オーダーキッチンをご検討の方はお気軽に当社までお問い合わせください。