2022年10月8日
別荘の豊かな時間に寄り添う、高級家具のようなオーダーキッチン。

別荘は、日常から離れ、心身ともにリフレッシュするための特別な場所です。リゾートホテルでは食事を外で楽しむことが多くても、別荘では自分たちのペースで簡単な料理を楽しみたくなるものです。
森の中で木々に囲まれ、自然の心地よさを感じながら過ごす。そんな空間には、キッチンもまた、周囲のインテリアになじむ木製のものがよく似合います。
今回ご紹介するのは、神奈川県足柄下郡箱根町の新築戸建てに設置したオーダーキッチンです。アルダー材の無垢扉、御影石のカウンター、アイアン製のハンドルなど、素材そのものの魅力を生かし、装飾を抑えながらも高級感のあるキッチンに仕上げました。
アルダー材の無垢扉が生み出す、家具のような存在感
キッチンの扉には、四方框(しほうかまち)デザインを採用。アルダー材の無垢材から一枚一枚つくり上げています。
アルダー材は、上品でやわらかな木目が魅力です。ウォールナットほど暗くなく、チェリーほど赤みが強くない、チークを思わせる落ち着いた色合いが、別荘の自然豊かな空間に調和します。
木の表情を生かした扉に、天然石のカウンターとアイアンの金物を組み合わせることで、素材それぞれの質感が引き立つデザインに。
キッチンを単なる調理設備としてではなく、リビングやダイニングの家具と同じように考える。そんな発想が、空間全体に統一感と上質さをもたらします。

カウンターには、耐久性にも配慮した御影石を採用
コンロ側、シンク側のカウンターには、どちらも御影石を使用しています。
天然石にはさまざまな種類がありますが、キッチンのカウンターに採用する際は、見た目だけでなく、日々の調理で使うことを想定した素材選びが大切です。
御影石は比較的酸に強く、硬度も高いため、キッチンカウンターの素材として適しています。一方、大理石は酸によって表面が傷みやすい性質があるため、使用する場所やお手入れ方法を考慮する必要があります。
天然石ならではの重厚な質感と、木製扉との美しいコントラスト。見た目の美しさと実用性の両方を考えた素材選びも、オーダーキッチンならではの楽しみです。

調味料やボトル類をすっきり収納する、使いやすい設計
美しいキッチンを保つためには、収納計画も欠かせません。
一般的なシステムキッチンでは、コンロ横にスパイスラックを設けることがありますが、今回はカウンター上にシャッター式の収納スペースを設けました。
木製のシャッターを採用することで、収納部分が目立ちすぎず、扉やカウンターの素材感にも自然になじみます。その反対側には小さな引き出しを設置し、細かな調理用品などを収納できるようにしました。
また、大きなボトル類はコンロ右側の引き出しに収納できる設計に。調理中に必要なものを取り出しやすくしながら、カウンター上をすっきりと保てるよう工夫しています。
吊戸棚の高さも、使いやすさと作業性を考慮して決定しました。カウンターでの作業を妨げない位置に設置し、収納としての機能を確保しながら、キッチン全体のバランスを整えています。
オーダーキッチンでは、収納したいものや使う頻度、調理の流れに合わせて、収納の位置や形状を細かく検討できることも大きなメリットです。
アイアン製のハンドルが、木と石の質感を引き締める
扉のツマミやハンドルには、アメリカ製のアイアン金物を採用しました。
無垢材のやわらかな木目と、御影石の重厚な質感。その組み合わせにアイアンの素材感が加わることで、空間全体がほどよく引き締まります。
装飾を増やすのではなく、木・石・鉄という異なる素材の魅力を組み合わせる。それぞれの存在感を生かすことで、落ち着きのある上質なデザインが生まれます。

シンクの納まりにもこだわる、オーダーキッチン
シンクには、カウンターへの取り付け方によって、主にオーバーシンクとアンダーシンクの2つのタイプがあります。
オーバーシンクは、カウンターの開口部に上から設置するタイプ。アンダーシンクは、カウンターの下側から取り付けるタイプです。
アンダーシンクは、カウンターの天板がシンクの開口部に沿って見えるため、天板の素材や厚みを生かした仕上がりになります。
どちらにもそれぞれの特徴があり、カウンターやシンクの素材、デザインの好み、お手入れのしやすさなどを踏まえて選ぶことが大切です。
オーダーキッチンでは、こうした細部の納まりまで検討し、素材の組み合わせや空間全体のデザインに合わせて仕上げることができます。

光と陰影が引き立てる、タイルの表情
レンジフードの照明にはLEDを採用しています。調理スペースを明るく照らすだけでなく、壁面のタイルにも光が当たるようにすることで、素材の表情をより楽しめるようにしました。
特に、表面に凹凸のあるタイルは、光の当たり方によって陰影が生まれ、平面的な素材とは異なる立体感が際立ちます。
キッチンの照明は、手元を見やすくするためだけのものではありません。素材の質感を引き出し、空間の雰囲気を整える役割も担っています。

クラウンの段差が生む、家具のような立体感
今回のオーダーキッチンでは、吊戸棚の上部に「クラウン」と呼ばれる装飾部材を取り入れています。クラウンは、家具の上部を飾るために使われる部材で、取り入れることでキッチンをより家具らしい印象に仕上げることができます。
このクラウンは、ただ一直線に取り付けるのではなく、あえてわずかな段差をつけています。そうすることで立体感が強調され、上部に奥行きと陰影が生まれます。
クラウンのサイズにはさまざまなものがあり、80〜100mm程度のものもよく使われます。今回は全体のバランスを考慮し、比較的小ぶりなサイズを採用しました。
細かな装飾部材でも、取り付け方や寸法によって印象は変わります。こうしたディテールの積み重ねが、家具のような存在感と上質さにつながっています。
レンジフードまわりも、空間に合わせて細部まで設計
レンジフードの上部にも、扉とツマミを設けています。
この部分は、実際に開閉できる観音開きの扉にする方法と、固定式のダミー扉にする方法から選べる仕様です。
見た目の統一感を重視するか、内部のメンテナンス性を重視するか。お客様の考え方や使い方に合わせて検討できます。
普段はあまり意識しないような部分まで、キッチン全体のデザインに合わせて整える。こうした細かな配慮も、オーダーキッチンならではの魅力です。
素材の魅力を生かし、装飾を抑えて仕上げたオーダーキッチン
今回のキッチンは、装飾を必要以上に増やさず、アルダー材の無垢扉、御影石のカウンター、アイアンの金物という素材そのものの存在感を生かして仕上げました。
木のぬくもり、天然石の重厚感、アイアンの引き締まった表情。それぞれが調和することで、華美な装飾に頼らなくても、豊かな質感と高級感を感じられるキッチンになっています。
素材の持つ魅力を大切にされるオーナー様にとって、この組み合わせは自然な選択だったのかもしれません。
別荘で過ごす時間を、より心地よく、豊かなものにするために。キッチンもまた、住まいを構成する大切な家具のひとつです。